設  立  趣  旨  書

1 趣旨

 いつの時代にも子どもは社会の宝です。大切に育まれることは次代を担う子どもの基本的人権であり,子どもを育むためにあらゆる努力を払うことは,親の義務であり権利です。同時に,日本国憲法と児童福祉法に代表されるように,子どもが健全に成長できるための施策を行うことは国にとっても責務です。
 あゆみ保育園は昭和47年4月1日に,徳島大学医学部附属病院における看護婦等の離職防止対策の一環として設置されました。その後,女性の社会進出に伴い,病院職員のみならず,徳島大学蔵本地区関係者の子育てセンターとして,産休明けから就学前までの保育提供に大きな役割を果たしてきました。
 平成4年に「看護婦確保法」が施行されて以降,医療機関における職場保育園の必要性がますます増加するとともに,少子化社会への対応として,政府は,エンゼルプラン・新エンゼルプラン等を提唱し,「子育て支援事業」に積極的に取り組んでいます。個々の家庭だけでは子育てを行うことが困難となっている現在,保育園が「子育て」にこれまで以上の役割を果たすことが求められています。
 病院の再開発計画により,平成11年6月16日に移設したことにより,徳島大学蔵本地区の保育園としてさらに発展する基盤が整って来ました。このような中で,あゆみ保育園の設置形態について慎重に検討を重ねて来ました。その結果、特定非営利活動法人とすることになりました。あゆみ保育園の保育理念,「あゆみの子ども像」,保育方針は次のとおりです。

(1) 保育理念
日本国憲法と子どもの権利条約・児童福祉法の理念に基づき,以下の5つの視点に基づく保育をします。
①乳幼児の発達を豊かに保障し,「あゆみの子ども像」に基づく保育を提供します。
②保護者の労働と研修を保障する保育を行います。
③教育機関としての設置主体の役割を重視し,実習生の受入れや研究に協力します。
④園職員(保育士・栄養士)の専門性を重視し,職員の働く権利を守ります。
⑤職員と保護者が一体となった保育園づくりをめざします。
(2)「あゆみの子ども像」
  • 健康でたくましい子
  • 豊かな感性と表現力をもった子
  • 自分で考え行動する子
  • 友だちを大切にする子
(3) 保育方針
①「健康でたくましい子」にするために
  • 給食

    栄養のバランスを考え,「食事をすること」が楽しい時間を過ごす場となるようにします。 昼食とおやつは手作りで,味付けは素材そのものを生かすよう薄味にします。歯ごたえのある ものや伝統的なものなど,手作りならではの献立や調理法を工夫します。
     新鮮な食品を用い,食品添加物は可能な限り使用しません。一品で多くの食品を取り込める煮物を中心とし,季節の素材を大切にした調理をします。離乳食は,素材の味がわかるように, だしだけで炊いた野菜煮からはじめ,徐々に食品数を増やし,幼児食へと移行します。
     食物アレルギーのある子には,できる限りアレルゲン除去食を行います。

  • はだし保育

    手や足は,運動器官であると同時に感覚器官でもあり,「とび出た大脳」と言われています。とりわけ,歩行能力を向上させ,身体移動のバランス感覚を養う上での足底感覚は重要です。大地をはだしで踏んだときの触覚・圧覚などは,足の皮膚・筋肉・腱などにある感覚受容器をとおして中枢神経に伝えられます。大脳運動野から運動器官に信号が伝達される際に,この情報が正しく処理されることにより,調整された信号として足の筋肉に送られてきて,足の運動がうまく続けられます。はだし保育を行うことにより,足部のアーチ(土踏まず)の形成を促します。

  • 薄着

    「子どもは風の子」と言われますが,幼児期は体重1㎏あたりの基礎代謝が成人の2倍あります。同じ外気温でも,子どもは成人より体温が高く,体から熱を多く発散させています。このため,薄着は子どもにとって本来的に必要なことです。加えて,厚着をすると,肌が外気にふれることが少なくなり,皮膚が弱くなります。体温調節が困難になるため運動不足になりやすく,心と体の調子が不安定になりがちです。薄着の習慣は,丈夫な体作りの第一歩です。

  • リズム遊び

    心身の調和のとれた発育・発達を促す「さくら,さくらんぼ保育園」のリズム遊びを取り入れています。ピアノの音(リズム)に合わせて,体全体を使って身近な動物や物を表現します。リズムにあわせて,身体各部を動かすことにより,脳を刺激し,神経系と筋肉の協調性を養うとともに,腕・肩・腰・指先・足先などに力をつけます。ピアノの音に合わせて体全体を使って表現するリズム遊びは,全身の神経作用を調整し,想像力を醒まし創造力を発達させます。個々の運動発達の段階も把握しやすく,発達の弱い部分にはさらに力を注ぐことによって,発達を促すことができます。

  • 生活リズム(早起き・早寝・朝ごはん)

    子どもの生活リズムの乱れが大きな社会問題となっています。文部科学省は,平成18年4月から「早寝・早起き・朝ごはん」全国運動を展開していますが,あゆみ保育園では,園設立以来,「早起き・早寝・朝ごはん」の取組を行っています。早起き・早寝をはじめとする生活のリズムを整えることによって,子どもたちは、朝から生き生きと活動できます。食欲も旺盛になります。子どもたちの心身のコンディションも良好に維持されて,心も落ち着き,情緒も安定していきます。保育園では,十分な運動量を確保して,夜には心地よい疲れを得るように心がけています。

②「豊かな感性と表現力をもった子」にするために
  • 戸外遊び

    戸外での土・水などを使った遊びを通して,感覚器官や自律神経が刺激され,運動能力も高まります。加えて,広い空間での自分の居場所や遊びが広がり,仲間関係を豊かにし,協調性や創造力を涵養します。

  • 散歩

    乳幼児は,感覚統合の基盤となる皮膚刺激,歩行,全身運動,そして手の活動を通して,言語・認識力を高めて行きます。その点からも園外に出ての散歩は大切です。自然とふれ会うことで感性が育まれます。また,交通マナーをはじめ,社会のルールなどを学ぶ機会にもなります。

  • ミニ遠足

    少し遠い目的地に出かけることにより,いつもの園生活に変化とアクセントが加わります。家庭での手作りのお弁当を楽しみながら,親子のコミュニケーションを図る機会になります。

  • 飼育・栽培活動・季節の行事などを通じて自然に親しみ,生命の尊さ・収穫の喜び・友だちと共感することの楽しさを大切にします。
  • 絵本や紙芝居の読み聞かせ・季節の歌・手遊び・伝承遊びなど,よりよい文化に触れる機会を多く持ち,見たり聞いたりして内面を豊に育みます。
③「自分で考え行動する子」にするために
  • 食事・排泄・睡眠・着脱・清潔等の自立を促すことによって,生活力を培います。
  • 友達とともに生活をしたり,遊んだりする中で体験を深め,生活の仕方や社会的ルールを身につけ,自律していけるようにします。
  • 社会的ルールを獲得させるために,倫理観に裏付けられた知性と技術,豊かな感性と愛情を持って一人ひとりの子どもにかかわります。身体的苦痛を与え,人格を辱めることがないように留意し,子どもの基本的人権を尊重します。
  • 何事もよく見,よく聞き,自分で考えたことが人にも伝えられるようにしていきます。
④「友だちを大切にする子」にするために
  • 同年齢・異年齢集団との関わりを大切にし,より小さい子やまわりへの思いやりを育みます。

なお,この特定非営利活動法人の定款では,「目的」として次のように定めました。

第3条 この法人は,日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神に則り,国立大学法人徳島大学の蔵本地区に勤務する職員等の子たちが健やかに成長できることを目指して,保育に関する事業及び男女共同参画社会の実現を目指す活動に取り組むことにより,公益の増進に寄与することを目的とする。 そして,この目的を達成するために行う具体的な特定非営利活動に係る事業とその他の事業を次のように定めました。
 第5条 この法人は,第3条の目的を達成するため,次の事業を行う。

(1) 特定非営利活動に係る事業
①保育事業
②子どもの育児・子育て相談(発達に関する相談を含む。)事業
③保護者に対する子どもの健全育成のための啓発事業
(2) その他の事業
①物品の再利用のためのバザー等の事業(課税対象)

これらの活動を実際にする会員としては,次のように定めました。
 第6条 この法人の会員は次の2種とし,正会員をもって特定非営利活動促進法(以下「法」という。)上の社員とする。
  (1) 正会員 この法人の目的に賛同して,前条のいずれかの事業に参画する意思を有して入会した個人
  (2) 賛助会員 この法人の目的に賛同して入会した個人及び団体
 つまり,この法人が行う保育事業に自分の子を預けようとする人をはじめ,若い保護者のために育児相談にのってあげようという意思のある人に至るまで,第5条に関わる事業に参画する意思を持つ人は誰でも正会員になる資格があるということです。さらに,意義は理解できるし,応援もしたいが自分は忙しいという人は,賛助会員として資金面での応援をすることも可能な組織の仕組みとしました。賛助会員には,個人だけでなく,団体としても参画することができます。
 このように,今回の特定非営利活動法人の設立は,少子化社会に対する国の施策とも一致するものです。子育てに悩む多くの親たちへの支援を行うとともに,専門家・有志に活動の場を提供するものとなります。
 また,7:1看護の実施等に伴う看護師確保や医師不足が叫ばれている現在における女性医師支援の方策としてあゆみ保育園の充実は,地域医療にも貢献するものとなります。

2 申請に至るまでの経過
 趣旨でふれましたが,あゆみ保育園は昭和47年4月1日の設置当初は,徳島大学医学部附属病院の看護婦等の子どもが対象でしたが,その後は,徳島大学蔵本地区関係者の子どもも対象とするようになって来きました。
 このため,平成16年より国立大学法人徳島大学全体の福利厚生施設として位置づける方向で検討を進めて来ましたが,平成19年8月27日開催の授乳所運営委員会で,今後特定非営利活動法人の設立について検討を行う旨の説明を行い,同年11月21日開催の授乳所運営委員会で特定非営利活動法人設立に向けて準備を進めていくことについて承認され,平成20年1月17日開催のあゆみ保育園運営委員会で法人設立準備会の役割をあゆみ保育園運営委員会に持たせることについて承認されました。
 その後,同年2月15日開催の設立総会(あゆみ保育園運営委員会)において,趣旨書,定款等について承認され,関係書類を添えて申請する運びとなりました。

 

平成20年2月18日

特定非営利活動法人徳島大学あゆみ保育園

設立代表者 住所 徳島市国府町西高輪204番地の3

氏名 佐野 勝德